神奈川県立花と緑のふれあいセンター 花菜ガーデン

竣工年2010
所在地神奈川県平塚市
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外部サイト花菜ガーデン

振り返ってみると、植物(花と緑)に関係の深い建築を多く設計してきた。

事務所設立当初に設計した「サンスクエア・ヤマノタ」は植物温室を中心にした商業施設だった。ガソリンスタンドの跡地に、生花、園芸ショップ、レストランを複合させたものだが、「植物のある生活」をイメージし、提案したものだった。つづいて丹波篠山に計画した大温室「カーニバル・ショーケース」は植物展示というよりも、「植物と共生する都市」そのものをガラスの空間の中に展開したものだった。参加した博覧会でも植物とは縁があった。大阪・花と緑の博覧会における「東急フローリアム109」では公共空間である道を、花と緑で立体広場庭園化する提案をし、浜名湖花博会場計画および愛・地球博(バイオラング)は花・緑・人が介在する空間のありかた、都市のありかたを提案したものと言ってよい。しかし、博覧会は限られた期間の仮設の空間であり、かりそめの都市にすぎない。一時の夢を演出したとしても、命ある花や緑が根源的に持っている「時間」を表現するには不十分である。

今回の「花菜ガーデン」は神奈川県のPFI事業として管理・運営までを視野に入れた恒久施設の提案が求められた。完成・オープン時よりも、時間とともにより良く成育していく環境こそが望ましい。
敷地は神奈川県平塚市郊外に位置し、西に霊峰富士、北西に丹沢山系の大山を望んでいる。
平坦な敷地に緩やかな起伏を与えることで場の領域感をつくりだすと同時に、富士を意識させる東西の軸と分棟配置による来園者の視線の延伸性が、周辺風景との一体感を生むように計画された。
内外空間に架け渡された神奈川県産材・杉集成材の大梁による簡潔かつ明快な空間構成は将来の空間の伸縮・変化に対応する一方で、命ある植物と人が集うのに効果的な場の背景として機能する。この「花菜ガーデン」が時間の経過とともに、植物が生茂り、花が咲乱れ、植物と建築が溶け合うような場に成長することが期待される。