国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館

竣工年2003
所在地長崎県長崎市
受賞歴第19回村野藤吾賞受賞
第8回アルカシア建築賞公共施設部門ゴールドメダル
バーバラ・カポチン国際建築ビエンナーレ賞公共施設部門最優秀賞
第46回建築業協会賞(BCS賞)受賞
日本建築学会作品選奨
グッドデザイン賞受賞
第22回日本照明賞受賞
第13回長崎市都市景観賞受賞
外部サイト国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館ホームページ

「祈りの空間をどう構築するか」——建築の設計テーマはこの1点に絞られている。

この建築は、広島に続き長崎に投下された原子爆弾による死没者に対して国が追悼の意を表し、恒久の平和を祈念するため、長崎平和公園内に建設された。

公園の中に建設されるため、周辺環境への配慮と、死没者の遺族の「周囲に気持ちを乱されることなく、ただ静かに祈りたい」という気持ちを大切にするために、建築の大部分が地下に埋設されている。
地上部は静寂性、厳粛性をめざし、高生け垣により周囲の構築物や車を視界から消し、「水」が静かに流れ落ちる円形の水盤とした。
建築の内外いたるところに「水」を配しているのは、被爆した人々が切実に求めた「水」を表現すると共に、かすかな水音が周囲の騒音を消し、人々の気持を鎮める役割を期待したからだ。大きな水盤の回りを「巡り歩く」ことで、心は内省的になり祈りに向かう。

水盤に設けられた入口より内部空間に入ると回廊が用意されている。
ここでも壁の回廊、柱の回廊を「巡り歩く」ことで、祈りへの心を集中させていく。
追悼空間は地下でありながら、天空より「光」を十分に取り込んだ明るい空間となり、過去の追悼と共に、未来の平和を祈る場ともなっている。雲の動き、太陽の動きを感知することで、時間の流れを意識する空間でもある。

地下の追悼空間から水盤上に立ち上がり爆心地の空の方角を示すスリット型トップライトにより、閉館後も地上で死没者を追悼することが可能となっている。
夜、水盤に7万余の小さな「光」が灯される。石板にあけられた小さな穴を通した光ファイバーの「光」は「水」に揺らめき、自然と祈りの気持ちをおこさせる荘厳な夜景をつくりだす。「光」の数は1945年に国連に報告された原爆死没者の数を示している。