平等院宝物館鳳翔館

竣工年2001
所在地京都府宇治市
受賞歴日本芸術院賞受賞
第43回建築業協会賞(BCS賞)受賞
日本建築学会作品選奨
グッドデザイン賞受賞
外部サイト平等院ホームページ

平等院宝物館「鳳翔館」は、創建950年を迎える平等院の境内の一角に建設された。前宝物館の老朽化に伴う文化財の保存環境の低下に対して、先端的設備を導入することで、国宝等の収蔵環境を改善することが第一の目的である。しかし同時に、宗教法人としてははじめての展示を目的とした総合博物館(登録博物館)としても計画された。ゆえにこの宝物館をテンプルミュージアムと称している。
現存する阿弥陀堂(通称:鳳凰堂)は、建築、 彫刻、絵画、工芸が一体化し、国宝が密度高く集積した空間になっている。さらに、その周囲には国内でも数少ない浄土庭園の遺構がひろがり、建築と庭園が融合した歴史的環境を今日に伝えている。
「鳳翔館」はこれら鳳凰堂を中心に史跡名勝に指定されている庭園の風致と調和した外観を実現するために、ランドスケープデザイナーとのコラボレーションにより、地盤レベルの高低差を利用し、建築ヴォリュームの大半を小高い丘に埋め込んでいる。さらに地上部分の修景についても、史跡名勝庭園との調和や連続性に配慮している。
埋め込んだ地下部分は展示室と収蔵庫の機能を有し、通路部分は自然光を意図的に取り入 れ、展示室は光ファイバーなどを使用した照明の工夫をほどこし、さらに、国内最大のガ  ラスウォールケースを使用するなど、展示物に対する空間特性を生かす構造にしている。 地下空間は、コンクリートの打放しの型枠を50mmのスギ板本実で0.8mmの凹凸をつける仕上げで、歴史の堆積をイメージさせる重厚な積層感を強調している。
一方、地下から上ってくる地上空間は、地下とは対比的な場面転換を意図し、明るく、軽く、開放的で、透明度の高い空間とした。広々とした「構築された外部空間」は、東西南北に風が吹き抜け、周辺の環境を借景として、人びとの居心地のよい溜まりの場になっている。
風致地区に対応した「和風建築に」という課題には、鳳凰堂を参照した3層に重なる軽快なフラットルーフ、低い軒天井に覆われた縁側、木造垂木を思わせる連続する鉄骨梁、格子戸、和紙スクリーンなど、現代的で抽象化された表現で対応した。
このように、既存の歴史的環境も、新しく構築された環境(宝物館)も、鳳凰堂やそれを取り巻く景観の保全を第一義にし、境内の拝観順路の中に宝物館を組み込み、連続された拝観のシークエンスとしてとらえることができるテンプルミュージアムとして計画された。