桐蔭学園メモリアルアカデミウム

竣工年2001
所在地神奈川県横浜市

桐蔭学園、創立35周年記念事業として計画されたこの施設は横浜地方裁判所特号法廷(陪審法廷)の学園内への移築、復元、保存が建設の発端となっている。
この法廷は昭和5年震災復興事業で横浜市の日本大通りに創建された。日本に2例しか現存しない陪審法廷であり、第2次大戦後BC級戦犯を裁いた軍事法廷としても知られ、重要な歴史の現場としての保存が求められていた。法廷は実際に法学部の学生による模擬裁判などの授業にも使われるが、一般にも公開される。

学園キャンパスへの移築に際し、法廷のインテリア保存のため、周囲を回廊で囲み、一種の鞘堂建築として計画されている。
この法廷を中心にミュージアム、ライブラリー、ホール、インフォメーションなどの諸施設の複合建築として構想された。
ほとんどの施設は地下に積層されるように埋め込まれ大きく穿たれた地下の中庭を取り囲むように配置されている。これは地上にあらわれる建築ボリュームを極力押さえることによって周辺の風景と連続した環境を形成するためである。

地下に掘りさげられた外部空間、深い軒下で近隣の多摩丘陵までも見渡せる外部空間、見上げると切り取られた空が望める外部空間。ここでは建築によって構築された居心地の良い外部空間が立体的に形成されている。
インドのステップウエル(階段状に地中に掘込まれた井戸)のような地下に降りてゆく空間はあたかも地層を掘り進み、歴史を溯行していく試みに似ている。それぞれの機能を持った内部空間とは異なり、この外部空間は立体回遊性に富み、いたるところで人々の溜まりの空間が用意され、学生達の交流空間としての利用を促す。
この施設は、人々の交流の場であると同時に学園の精神的中心となり、学生生活の記憶のシンボルともなるように計画されている。