静岡理工科大学 土木工学科棟

竣工年	2022
場所	静岡県袋井市  [Map]
事業主	学校法人静岡理工科大学
設計・監理	栗生明＋北川・上田総合計画 小石川建築ノ小石川土木
協働	構造｜レン構造設計事務所 設備｜ZO設計室 土木｜町田設計
施工	鈴与建設
受賞	第55回 中部建築賞 2023 グッドデザイン賞

静岡理工科大学は静岡県袋井市の私立理工系総合大学です。その土木工学科は、県内で初めて創設される土木分野専門の学科です。2022年4月の開学に向けて、新たに土木工学科の校舎が計画されました。キャンパスモールを主軸とした全体計画との調和や、隣接する建築学科棟（2015, 設計：NASCA）との接続による建築・土木分野の融合、土木工学の各分野の横断的な交流が求められました。

「土木と建築の融合」を目指し、建築学科棟と隣り合う土木工学科棟は、両者の対比と一体性を同時に表現する形態を構想しました。土木工学科棟は壁厚1mにもなる鉄筋コンクリートの3つのコア（階段、エレベーター、設備室、倉庫などを含む）と、2.7mグリッドのワッフルスラブが大空間を支える構造により、土木的スケールを表現しました。樹上の柱やルーバーなど繊細な〈線〉の集積で表現された建築学科棟に対して、土木工学科棟は〈面〉や〈ボリューム〉で構成し、シンボリックで安定した印象を与える意匠を目指しています。

1階は、多目的作業やアクティブラーニング、プレゼンテーションのできる「対話・協働・発表のフロア」。2階は、教室・大教室で構成される「知識学習のフロア」。3・4階は、ワッフルスラブの下の開放的なワンルームに研究スペースが展開される「知的交流・研究創造のフロア」です。研究室の単位で部屋を区切るのではなく、ランダムに分散した教員室の周囲に研究スペースやラウンジを有機的に配置することで、異なる分野の学生たちが同じ空間を共有しながら研究活動を行う居場所をつくり、土木の各分野の交流という要望に応えました。ミニマルで開放性の高い教員室は、開口部やガラス欄間を通してどこからでも屋外を感じられるようにするとともに、教育の透明性や少人数教育の特徴を活かした教員と学生の距離の近さを表現しました。

土木工学科棟と同時に、土木工学に関わる実験を行う〈土木工学実験棟〉も計画しました。土木工学科の向かいに立ち、その間にはキャンパスの憩いの場として広場を設けました。内部は高天井の大空間で、水理実験装置や構造実験の反力床、コンクリート実験室などを備えています。
土木実験棟は、既存の建築学科の構造実験棟と環境工学実験棟に並び立ち、実験棟「群」としての一体性を感じられるよう、ボリューム検討や共通の仕上げの採用を行いました。広場に面する学生の居場所としても位置づけ、コーナーは全開放が可能なガラス折れ戸とし、深い庇を設けています。公道に面して地域住民が実験を見学できる開口部を設け、大学と地域のつながりの強化を図っています。

土木工学科棟の構造計画は、「耐震性を有する3つのコア」、最上階の無柱空間を実現する「格子梁の屋根」、及び「様々な工法を用いたハイブリット構造」を特徴とし、「土木的スケールの表現」と「学生が構造を生きた教材できる」ことを目指しました。
柱と耐力壁が同厚のコア壁を耐震要素とし、地震時に大きなねじれが生じないよう3ヶ所のコアをバランスよく配置しています。屋根は格子梁のワッフルスラブ形式のプレストレスト構造（ポストテンション方式）です。屋根面のPC梁は、外周33.5mx32.0mをPC大梁（600×2350）で囲み、内部は格子PC小梁（500×1250）を2700ピッチで配置し、その外周を片持ちスラブの庇で構成しています。屋根の施工は非常に複雑な難工事でしたが、施工者と支保工の配置や緊張順序などの事前調整を十分に行い、施工後の躯体実測値からも非常に精度の高い建物が実現しました。

Photo：nacasa & partners