Ark館ヶ森
竣工年 | 2023 |
所在地 | 岩手県一関市 |
地図 | Map |
外部サイト | Ark館ヶ森 公式Webサイト |
「食はいのち」の理念のもと、養豚を基幹事業に無農薬の小麦や野菜、無添加のハム・ソーセージ等を生産し、循環型農業を実現する岩手県一関市の(株)アーク。その生産者と消費者の交流の場として構想された牧場「Ark館ヶ森」(旧「館ヶ森アーク牧場」)は、100haもの敷地に広大なガーデンや畑が拓かれ、四季折々の花や動物とのふれあい、放し飼いの鶏のたまご拾い体験などを楽しむことができる。私たちは、中長期計画を構想するグランドマスタープランの策定から、ブランド名称の変更を伴うリブランディング、既存施設の改修2棟と新築2棟を含む大規模工事の設計・監理、園内のサイン計画、さらにロゴや生産品パッケージ、Webデザインなどの総合的なリニューアルを統括した。
牧場の生産品を販売する「ファームマーケット」は平成5年竣工の既存建築物を耐震補強し、売場面積を拡大して内装を刷新した。木造の小屋組みを現し、大きな気積の下で主要な生産品である「精肉」「有機小麦(ベーカリー・菓子)」「有機野菜」を軸に売場をゾーニングしている。店内の各製造部門はガラス張りで可視化し、安心・安全の食づくりを表現した。外観は赤い屋根の群として見える牧場の風景を参照しながら、入口に切妻型の門構えを増築した。来園者の第一印象をより鮮明に印象づけ、店舗の誘引性を高めている。
牧場で生産されたオーガニック食材を提供するレストランは、牧場の全景を見渡せる円形の既存建築物を活かしながら、増築により客席の拡張やオープンキッチンの増設、プライベートルームの付加を行った。各面の窓は方立のない大型の断熱サッシに入れ替えて、牧場の風景を絵画のように切り取り、Low-Eガラスの導入により西日による日射負荷を低減している。
リニューアル以前、来園者は自家用車で園内を回っていたが、歩くことが五感を刺激し体験価値を高めることにつながると考え、原則として車の乗り入れを止め、周遊バスと徒歩により散策するよう運用方法の見直しを提言した。事業主と対話を重ね、徒歩での散策を前提としたサイン計画や、有料・無料エリアの区分けや料金システムの変更、それに伴う入園ゲートとして弓型の木造のグラスハウス「ファームエントランス」の新築を行った。ファームエントランスには、チケット販売や植物の販売、ワークショップの機能を設け、牧場の新たな顔となっている。
photo : 北川・上田総合計画