堺市ガス気球整備及び運営事業「おおさか堺バルーン」

竣工年2025
所在地大阪府堺市
事業主堺市/堺観光コンベンション協会/アドバンス株式会社
施工一期工事(2021):株式会社奥村組
二期工事(2025):昭和基業株式会社
外部サイトおおさか堺バルーン 公式HP

「おおさか堺バルーン」は、世界最大級の墳墓である仁徳天皇陵古墳(大山古墳)を含む世界文化遺産「百舌鳥古墳群」を、近接する大仙公園の上空から望む係留型ガス気球施設である。
2019年の堺市による構想発表から、コロナ禍による事業延期などの困難を経て、大阪・関西万博の会期に合わせて2025年10月に開業した。運営はアドバンス株式会社が担う。

弊社は、フランス・AEROPHILE社製の係留型ガス気球システム「Aero30」を国内へ導入するため、都市公園に設置される発着場の基盤整備、気球運航が景観に与える影響に関する検討、付帯する観光案内所の建築設計と工事監理など一連の業務を担当した。海外製システムの技術的要件と国内の法規制・敷地条件との調整を通じて、構想の実現を支援している。

地上約100メートルからの眺望は、古代の古墳群と中世の環濠都市遺構、現代の市街地が重層する堺を立体的に把握することを可能にする。
上昇に伴ってもたらされる静けさ、風、浮遊感が搭乗者の身体的な感覚をひらく。気球は、故郷の日常や記憶を俯瞰するための装置と言えよう。

青空に浮かぶ気球は市内の広範囲から視認され、都市の新たなランドマークとなっている。日没後、照明を帯びた気球は、さながら満月のように穏やかな存在感を示す。古墳群という遺産に新たなまなざしを与える本施設は、暮らしに静かな祝祭性と歓びを与え、観光と生活、過去と現在の関係を編み直していくだろう。